異邦人と鳥

とある国で、彷徨いながらもていねいに生きたいと願う異邦人とイン子たちのくらしと回想録

チャーリーがいなくなってから 〜回想録3:チャーリーの経験しただろう苦痛〜

実際、わたしが悲しいことなどどうでもよい

目が腫れているとかどうでもよい

 

こうして書くことで自分のもつ悲しみを消化したり

落ち着かせたりしようとするのは

この局面においてすこしでも何かできる力を得るためである

 

この期に及んでは

チャーリーが経験したであろう恐怖や苦しみは

想像する以外はなにもできない

それらを直接とりはらってあげることはできない

 

あんな知らないところに突然放り出されて

気温は低く

どこにいっていいかもわからなかっただろうし

 

上空をしばらく旋回していたときの呼び鳴きが頭から離れない

 

こわかっただろう

さむかっただろう

さむさはさむいとかでなくいたかっただろう

 

おなかもすいただろうし

のどもかわいただろう

でも空腹や口渇など感じないくらいに

不安で恐ろしかったかもしれない

 

もしかしたら近くの大きな河に力尽きて落ちてしまったかもしれない

 

カラスはあまりいないけどカラスに追いかけられたかもしれない

タカもたまに見かけるので狙われたかもしれない

だれか心ない人に傷つけられたかもしれない

 

捜索中はすずめたちが元気にとびまわり

リスは口笛をふきながら歩くわたしを不思議そうに木の上から見下ろしていた

 

自分を責めても何も得られないとは本当のことだったようだ

自分を責めても取り返しがつかないし何の意味もない

もちろん、きちんと反省して行動を変えていくことはできるだろう

だけど、自責の念は反省して行動を変える原動力にはならない

あれは小説の中だけだ

言葉を知らない人がそうやって表現するしかなかったのだと思う

 

でもせめて、チャーリーが経験したであろう恐怖や苦しみは共有したい

そしてそうすることでチャーリーの存在を少しでも感じとりたい

 

空っぽのかごにはまだチャーリーの存在感がばっちりある

見えないしさわれないだけで

 

チャーリーのきもちなどわたしみたいな愚かな人間にはわからないだろう

でも少しだけでもチャーリーのことを考えたい

でもいない本当にいないのだ